インフレ・デフレで老後資金の資産価値は勝手に減ることも増えることもある

インフレとデフレの影響

老後資金といえば、インフレ・デフレには要注意です。なぜなら、物価上昇率に気をつけていないと、知らず知らずのうち破産に近づいてしまう恐れがあるからです。

ここ20年ほどは物価がほとんど変わらない状態が続いていましたが、資本主義の国ではレアケースです。

いざ物価上昇が始まったとき、どのように対処していくべきなのでしょうか?

銀行預金を溜め込んでいてもではインフレに対応できません、それでもほんのわずかですが金利がつくからまだマシで、一番良くないのはタンス預金。これではまったく対処できません。

2000年代の日本は異常だった

2000年代の日本は、20年間ずっとデフレに悩まされてきました。郊外にあるショッピングモールにはまさにデフレの象徴的存在です。

ファストファッションやファミリー層向けの安価なブランドが並び、100円ショップも必ず入っている……これが当たり前の光景として全国に広がりました。

車にせよ、服にせよ、高級ブランドよりも「ほどほどの値段でまあまあの品質」を求める客が多いのはデフレのせいなのです。

この感覚が染み付いていると、物価が上昇する状況がどんなものか、よくわからなくなってしまうのも無理もありません。

しかし、資本主義経済の国というのは本来物価がゆるやかに上昇し続けるものです。つまり、2000年代前半の日本が異常だったということです。

たとえば今、アメリカのレストランに行くと、日本では1500円ぐらいで食べられるはずのセットが、円換算で3000円くらいすることがザラだったりします。これは単に為替レートの影響なのではなく、日本のデフレと経済成長の鈍化が原因です。

将来、日本がゆるやかにインフレしていけば、あなたが貯めた老後資金は相対的に価値を下げ続けていくことになります。

定期収入が減少する物価上昇率に注意

ほとんどの人は、定年後の主な収入源は年金です。あとは退職金と現役時代に貯めたお金でやりくりすることになります。

定期収入が減ってしまうからこそ、老後は物価上昇率に注意しておく必要があります。自分の資産が相対的に上がるのか下がるのかをきちんと認識しておかなければならないのです。

デフレであれば物価は上がりませんから、むしろ資産価値は増えることになるので安心です。しかし、インフレになると資産は目減りしていきます。

政府はインフレ率の目標を年2%としていますが、実際にどのように推移していくかは定まっていません。

デフレ、インフレの極端な例

極端なデフレの場合

日本経済の成長が伸び悩んでインフレ率がマイナス10%の場合。毎年物価が10%ずつ下がっていきます。

10年後の物価は約3分の1になります。100円のジュースは33円、1万円の洋服は3000円ちょっとです。

貯めていた老後資金は相対的に価値が上がるので、当初の想定よりも余裕のある暮らしを送ることができます。

若い世代にとっては良くないことですが……

極端なインフレが起きた場合

日本経済がデフレから脱却し、年率10%のインフレになった場合。

つまり毎年、物価が1.1倍になる計算です。この状態が10年続くと物価は約2.6倍になります。100円だったジュースは260円に、1万円だった洋服が2万6千円になるわけです。

年10%というのは、消費税が10%になるのとは比べ物にならないインパクトがあります。ましてや定期収入が年金しかない引退世代には相当な打撃です。

ここ数十年、長く続いたデフレ時代の感覚でいると、急激な物価上昇についていけなくなります。

そして、気づいたら老後資金が全然足りない……という状況になってしまいます。

インフレ対策は投資が最適

ただ金庫にお金を保管しておくだけでは、物価の上昇についていけなくなります。

インフレ対策のために、資金のいくらかを投資に回しておくことが重要です。

年5%の成長でも、複利で運用すれば15年後には倍になります。もし50歳から老後予定資金の半分でも投資に回していれば、65歳の時点で予定資金は大幅に増えていることになります。

投資は怖いというイメージを持つ人も多いのですが、正しい商品を選べば10~15年スパンで資金がマイナスになる確率はかなり低くなります。

インフレに怯えつつも銀行預金にそのまま入れておくリスクと比べれば、むしろ安全策といえるでしょう。

投資で選ぶ商品はなにがいいのか

リスクが低いのは国債ですが、インフレ対策として運用するなら投資信託が無難な選択になります。自分の身体で働けないのなら、お金に働いてもらうしかありません。

日本国内だけでなく、広く世界に分散投資できる商品でかつ、手数料が極力安い(信託報酬が0.1~0.2%以内)ものを選びましょう。

「iDeCo(イデコ・確定拠出年金)」や「つみたてNISA」で選択可能な商品の中から探せば、法外な手数料を取られることはありません。

一度に全額を投入するのではなく、毎月同額を積み立てていくことで、価格変動の影響を抑えながら少しずつ資産を増やすことができます。

引退が近づけば近づくほど投資のリスクは高まるので、なるべく早い段階で少しずつ積み立てていくことが重要です。

銀行や証券会社の窓口に相談に行ってはいけない

間違っても銀行や証券会社の窓口に相談に行ってはいけません。口座もネット証券(楽天証券やSBI証券)で開きます。

まずは自分で書籍を買ったり、インターネット検索をしてどのように資産運用すればよいか調べてみましょう。誰か1人の意見をすぐに鵜呑みにせず、複数の情報に当たることも大切です。