個人年金は老後の備えに適切?
年金の支給額が減っていくことは避けられない流れです。日本は少子高齢化が進み、労働人口が減っていくため、年金を支える財源が足りなくなるからです。
そのため、自分で年金を用意することを考える人も少なくありません。代表的なのは民間の保険会社が用意している「個人年金保険」です。
結論から言うと、個人年金保険には加入する必要はないでしょう。
特に、「将来の年金が心配だから備えが欲しい」と考えている人ほど、加入しないほうが良いです。
個人年金保険という名前がついていますが、実は単なる貯金とさほど変わりなく、節税効果もそれほどではありません。他にも優れた商品はあるので、優先順位は低いものです。商品の性質と自分の財政状況をよく確認して加入を検討しましょう。
個人年金保険とは、どのような商品なの?
老後に向けて個人年金保険に入っているから、将来の備えは大丈夫だろう……。
と思っているかもしれませんが、しかしこれがいったいどんな商品か、本当の意味で理解している人はほとんどいません。よくわからず雰囲気で加入している人が多いのです。
個人年金保険には、大きく分けて「定額性」と「変額性」があります。この2つは全く異なる商品なので注意が必要です。
定額年金保険
「定額年金保険」は、加入時に払い込む保険料と将来受け取る年金があらかじめ決まっています。
契約したときに設定されている予定利率で運用されるため、限りなく銀行の預金に近い商品です。
ただし、超低金利が続いているため、預貯金に毛が生えた程度の利息しかつきません。
変額年金保険は
一方の「変額年金保険(投資型年金保険)」は、実質「投資信託」のような金融商品です。
保険会社がリストアップする数種類の投信から投資先を選び運用します。
払い込んだお金を一定金運用した後、年金の原資となって返ってくる仕組みですが、運用成果が上がれば将来の受け取る額は増え、うまくいかなければ大きく損します。
理論上、銀行に預けるよりは良い。しかし、たいしたメリットはない
まず銀行預金より利率が高いことがメリットの1つです。
銀行の定期預金の金利は0.01%、ネット銀行の場合でようやく0.15%程度であるのに対して、個人年金保険なら0.2%を超えるものもあるからです。
さらに、生命保険控除によって節税効果もあるので、利率はさらに上がります。
と、いう説明がされるのですが、これだけで加入を決断するのは早計です。
金利は長期的な株式投資に勝てない、節税効果も限定的
金利は銀行よりは良い
自分で投資信託を直接購入すれば4000種類以上の商品から好きなものが選べる上に、定額年金保険の保険料に含まれる保険会社への手数料を払う必要もありません。
とくにNISA(少額投資非課税制度)やつみたてNISAが始まり、ネット証券で買えば買付手数料が無料の商品ばかり。低コストで買える環境が整っています。
いちいち保険会社を経由して余計な手数料を払うより、自分で運用したほうがはるかに儲かるし、お得なのです。
20年以上先を見越して毎月積み立てていくのであれば、保険に加入するよりもインデックスファンドの投資信託のほうがむしろ安全に資産を増やせます。
世界全体の経済成長は平均すると年7%程度です。途中波があったとしても、20~30年かければだいたいこの数字に収束します。投資信託を買うというのはそういうことなのです。
節税効果はあるにはあるが限定的
生命保険控除は最大12万円までです。その上、節税というものはそもそも収入が多い人でないと大きな効果は期待できません。とくに就職したてで収入が少ない若い人などは、掛け金を多くできないため効果が薄くなります。
終身年金タイプ(死ぬまでずっと支給される)が良いと思えば、掛け金は多くなり負担は増える。しかし、控除の上限があるので節税効果は頭打ち。かといって、掛け金を減らせばその分受け取る額も減るし、節税効果も薄くなる。
帯に短したすきに長し、かゆいところに手が届かないのです。
資金に余裕があるなら、まずはiDeCoやNISAのほうが良い
余裕がある人であれば、iDeCoやNISAに加えてダメ押しとして使う手も考えられますが、そもそも老後を心配される方は資金に余裕がないからこそ何かしら積み立てておきたいと考えるはずです。
だからこそ、効率よく老後資金したい。そうなると、個人年金保険という商品はあまり魅力的ではありません。優先順位はかなり低くなります。
保険の機能は持っているが、それほど大きなメリットはない
個人年金保険は名前のとおり「保険」の機能もあります。
しかし、その実態は自分払い込んだのと同じ分が保険金として戻ってくるだけです。つまり、保険の機能を期待して加入するほどのものではない、ということです。
保険会社は「年金不安」をキーワードに「個人年金保険」を勧めてきますが、一切聞く必要はありません。
銀行に年金保険料と同額を預金しておき、将来その預金から必要に応じて引き出すほうが自由にお金を使えて便利という考え方もできます。というか、そう考えるべきでしょう。
そして、緊急時用の資金が貯まったら、その後はiDeCoやNISAを利用して運用していくのが一番賢いやり方です。