自営業家庭の老後のお金シミュレーションと対策
自営業は退職金もない、厚生年金もない。老後が不安だ……とイメージされている方もいるかもしれません。
しかし、それは「自分で老後資金を何も準備しなかった場合」に限った話です。
実際は退職金代わりの小規模企業共済や、年金と同じように老後に支払われる個人年金保険、国民年金基金、iDeCoなどがあります。これらをうまく活用すれば自営業やフリーランスでも、サラリーマンや公務員と同等かそれ以上の収入を得ることは可能です。すでに加入している方も少なくありません。
各種制度を活用した場合としなかった場合では、老後の資金にどれくらいの差が出るのでしょうか。
身体を上手に維持管理してできるだけ資金を確保することが最重要課題
公的年金には、全国民が共通で加入する「国民年金」と、会社員・公務員が加入する「厚生年金(共済年金)」の2つのタイプがあります。
両方に加入できる会社員や公務員は月額にして約16万円を受け取ることができますが、自営業・フリーランスが加入するのは「国民年金」のみです。受け取れる額は月額約65000円ほどですから、差額はおよそ10万円にもなります。
当然、これだけの年金で生活するのは難しいと言わざるを得ません。若いうちから貯蓄をしておくか、長い間働いて稼ぐか、どちらかを選択することになります。
ですが、自営業者の強みは、「定年」がなく、健康状態によってはいつまでも働くことができるということです。そのため、シミュレーションでは75歳まで働くことを想定しています。
おそらく自営業者の方の多くは、リタイアの時期を明確に決めていないのではないでしょうか。決めていたとしたらかなり早い段階で将来に向けて備えを始めているはずです。
75歳まで働き続けた場合
75歳まで働く場合、平均的な収入の400万円さて計算すると5年間の収入は4000万円になります。
年金は夫婦合わせて13万円 × 12 × 25年だと約4000万円。
合わせて8000万円となり、平均的な支出が7000万円であるとすると、収支は黒字です。
ただし、これは年収400万円以上をキープし続けることと、60歳まで国民年金保険料を満額納め続けていることが前提となります。
自分で年金、退職金を用意する場合
自営業は収入が安定しないので、長期的な家計を計画しにくい面があります。高齢になっても高収入を維持できるかどうかわかりません。
そこで、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済(退職金代わり)の制度を利用し、65歳でリタイアした場合どうなるか、シミュレーションしてみます。
iDeCoと小規模企業共済で老後資金を準備する
iDeCoを35歳から60歳まで月々68000円積み立てて、年3%で運用した場合、掛け金は通算で2000万円に対して戻ってくるのは3000万円となります。
小規模企業共済を満額月7万円で35歳から65歳まで積み立てると、掛け金2900万円に対して、戻ってくるのは3500万円です。
合わせると6500万円。これに年金4000万円を合わせると1億500万円。かなり余裕の老後を送ることができる計算です。
iDeCoと小規模企業共済の掛け金を満額で設定した場合なので、かなり楽観的な数字になりました。
しかし、掛け金が半額だとしても老後の資金として約3000万円の備えができるわけです。65歳以降も無理のない範囲で働けば、かなり見通しはよくなるはずです。
自営業は現役時代の資産運用で老後に差がつく
自営業・フリーランスの場合は、施設・設備費を始め、交通費といったものも自己負担です。これらのことを考えると、稼げるうちにできるだけ資産を確保しておくことが、リタイア後の生活を支えるうえでとても重要であるとわかります。
自営業の強みである「経費」をうまく使い、節税をしながら貯蓄していけば、サラリーマンよりも有利です。
健康状態を維持と公的制度の活用
定年がないのが自営業の強みですが、その分健康に気を使わなければいけません。何よりもまず身体のことを第一に考える習慣をつけることが肝心です。
そして自営業者でも加入できる「国民付加年金」「小規模企業共済」「iDeCo」の活用は必須です。
ただし、国民年金基金はインフレに弱いので、自分で運用するiDeCoを使うほうが良いでしょう。
付加年金は、通常の国民年金保険料に毎月400万円の付加金を上乗せして支払う制度です。上乗せされる金額は「付加した月数×200円」です。65歳から生涯に渡って受け取ることができます。
「小規模企業共済」を利用しましょう。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。
個人事業主や共同経営者、会社役員などが加入できる共済で、個人事業を廃業した際などに共済金(解約手当金)が支払われるというものです。
掛け金は月々1000円から7万円まで自由に設定可能です。もちろん、全額が所得控除されます。